サラシナ
芝田勝茂・作、佐竹美保・画、発行・あかね書房
[ISBN] 4-251-06655-3
2001年9月 発売 ¥1,470(税込)
- = あらすじ =
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サキは、ゆっくりと体を浮かせてみる。すると、ふわりと宙に浮かんだ。飛べる。窓から外に出る。旅が、始まるのだ。聞こえる。
胸の奥に響く、はるかなる時の恋歌。
- = PostScript =
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『ドーム郡ものがたり』をリアルタイムで読んだ読者が、やがて児童書出版社の編集者となり、わたしの担当者となって目の前に現れる、という、いってみれば作家冥利につきるような出来ごとがわたしの身に起きるとは思わなかった。そして、この作品を『ドーム郡ものがたり』から20年目に出版することができた。いろんな因縁があり、いろんなつみかさねがあって、ひとつの山を登るようにして、やっと一冊の本ができるということをこれまでにも何度も経験してきたが、この本もほんとうに紆余曲折ののちに完成した。一時は編集者もわたしも、出版をあきらめたことさえあった。こんなふうに書けば、とても芝居がかっているが、本当のことである。今でも、この作品が完成するまでのいくつかのシーンをあざやかに思い出す。最終稿ができたとき、しばらく呆然としていた。作品が要求していた『理想型』に何とかしてたどりつけた、という想いからである。うれしい、というよりは、大切な勤めを果たすことができてよかった、というような想いの方が近いだろうか。もちろんこれまでのわたしの作品同様、この物語が合うひと、合わないひとの区別は確実に存在するけれど、合うひとにとっては、多くのものを受けとめてもらえる作品であることを確信しています。どうか読んでみてください。
それにしても、挿絵のすばらしさ。佐竹さん、ありがとうございました。つい先日 小6の子と挿絵を見ていたら「ほんとだ!『風』が吹いてる!」と。
- = 書評 =
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西欧の作品を模した、王権の護持再興を目指す歴史ファンタジーが目立つ中で、この作品の歴史へのアプローチの仕方は巧妙で出色である。極めてストイックなラブストーリーであり、大人も子どもも楽しめるタイムファンタジーの傑作である。(産経新聞2001年10月09日)
この作品は、古代日本を舞台としたおおらかなファンタジーである。けれど物語は いたってシンプル。…ただ、それだけ。でも、そのただそれだけが実にいい!(毎日新聞2001年10月24日)
「おれもあんたも妥協はしなかった。だからこそ、ここまでたどりつけた…それを、決して妥協しなかったから偉い、なんていってはいけない」恋しても自らを失わない男の科白が生きていて、現代にも通じる。(京都新聞2001年11月11日〜作家越水利江子さんのエッセイより〜)
現代ッ子のサキと遠い時代の姫君。けれども「願えばすべてが可能になる」という気持ちがどこかでつながっています。構成力たしかな、明るいファンタジーをどうぞ。(赤旗2001年12月09日)