おばあちゃんの一日

おばあちゃんの隣にあるものは
古びたタンスとちゃぶ台
いつもいつも座る場所は
陽のあたる縁側

僕と話す時
とてもよく笑うので
僕もおかしくて笑った
でもよく考えてみると
全然おかしいことでもないのに
いつまでも笑った

思いっきり笑った後は
涙が出た
おばあちゃんが持っている
たくさんの時間に
おばあちゃんが持っている
たくさんの想い出と涙に

おばあちゃんは不便なものを
いつまでも持っている
例えばよく止まる古びた時計
おじいちゃんが買ってきたというその時計は
思い出したように咳をしていたおじいちゃんに似て
時々ふと止まる

「時を計るなんてことは、どだい面倒でやってらんねえ。」
人生が一度きりのものじゃないなら
僕もこんなに悲しくはならない
どうしても止まってしまう時計を
凝りもせず動かそうとする

おばあちゃんの一日は
そんなふうに
役にはたてないものたちの為にあった

おばあちゃんがいなくなったこの部屋で
悲しくて思いっきり笑った

ゆるやかな 鐘のように鳴り響く
おばあちゃんの一日に


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