軒下の靴
はきつぶされた 僕の靴は
春の雨に打たれながら
僕を待っていた
生き物なのに動かずに
どこにも行けないで
困った顔のまま
雨があたる その場所に
脱ぎ忘れられて
僕はなんだか
約束を忘れた子供のように
ばつが悪く
慌てて玄関に運んだ
はきつぶされた 僕の靴は
もう一人の僕のように
僕が歩いた道のりを知っている
歩き方に癖があるから
かかとだけがすり減り
遠回りしかできないから
君をいつも疲れさせた
はきつぶされた僕の靴に
昨日までの僕がいる
僕がまた歩き出すのを
君は待っている
雨が降ればかかとから少し水が入るけれど
僕はまだ 新しい靴を買えないでいる