2007年01月24日
★神宮先生。

先日、神宮輝夫先生の某大学退官記念の最終講義(そこの教授としての)をお聞きする機会がありました。
大教室で、たくさんの現役女子大生とともに受講するという、最近まれな経験だったもので最初はそちらのほうに興奮していたのですが(おい)、講義がはじまると、神宮先生の戦後児童文学についての作品解説の面白さにぐんぐん引き込まれ、2時間があっというまでした。
以前お会いしたときも、世の中にこんなに品があってしかも戦闘的な(笑)知性あふれる方がいるのだろうかと感嘆したことがありますが、今回の中身は、戦後まもない頃からのさまざまな児童文学を、先生の視点であらためて解説されるというもので、ひとつひとつの作品に対する的確なまとめと批評に驚かされました。
批評というものが、批評として成立するためには、その背後に膨大な<批評者>の知識と洞察が必要なのだと、あらためて思いました。
先生の場合はそれに加えて、児童文学への<私>的な、ではない、あふれるばかりの想いと、あたたかさ、思いやりまで感じるのです。最近跋扈している、しょうもない批評や書評(もちろんネットも含めて)に辟易している身としては、こういう方に読まれ、批評されている作品群や作家たちにねたみさえおぼえました。
さらに講義は、受講生である学生さんたちへの、珠玉のような箴言がちりばめられていて、講義がはじまると数分もたたずに討ち死に(爆睡)してしまった方々にはほんとうにもったいないことでした。で、その珠玉のことばのひとつは、
『情熱を持って書いたものは、かならずひとの心をうつのだから、自信をもちなさい、そうやって書くということだけでも、りっぱなことなんです』。
これを、当日いなかったすべてのひとに、わたしからプレゼント。二次会でも、楽しい時間をすごさせていただきました。みなさん、ありがとう。

2007年01月14日
★『竜神七子の冒険』越水利江子(小峰書店2006年11月刊)

まだ、京都に市電が走っていたころ、そこには貧しいけれどいろんな豊かな人生があふれていた。
<負けて負けて負けて、もういやだというのに、また負けて、もうあかんと思ったら、嘘みたいに勝って、これからも勝てるかもと思えば、また負けて負けて負け続けて……でも、つらいばかりかといえば、楽しくてうれしいこともあって>(本文より)
これは阪神タイガースのことで、今は阪神もなんだかこのときとはちょっとちがってしまったような気がするが、ここに描かれているのはそういう人生の絵模様である。
読みながら、わたしたちは、涙とか笑いとかをこらえながら、目の前にあざやかにあらわれるひとりひとりのしんどさや重さ、あるいは軽さ(いやあ、オトコのあほさもとことん描かれます)そして、たくましさ、おもしろさ……つまりは、これが生きるということなのだ。そして、それらのひとびと、人生を見つめる作者の息遣い。
五条楽園で踊るお蝶さんがいう。「女にはな、どんな女でも、生まれつき小さな観音さんがいやはるんや」……苦しんでいる人間の小さな声、ため息を聞き逃さず、やさしくすくいとる観音さん。そう、これを書いているときの越水利江子は、菩薩だったと思う。だから読んでいるわたしたちは、ある至福感にみたされるのだ。