2006年09月13日
★作家のいちばんいやなこと(笑)。

★『星の砦』がほしぃ〜(笑)のに、出版社に問い合わせてもない、書店もないという掲示板の書き込み。わたしの本の中では、初版から同じ版元さんで続いているロングセラーは、これと『きみに会いたい』が双璧で、ほかの受難本(笑)が紆余曲折をへて再刊されたり、されても売れなかったり(笑)する中で、奇跡的に(爆)もう十数年のロングセラー(細々だけど)であります。
★『きみに会いたい』は、昨年も早稲田実業中等部の入試に、おそろしく難しい問題となって登場して、その難解さゆえか?複数の受験問題集にも収録され、かの芥川賞作家金原ひとみが小学生のときに愛読してくれた本であるとか、いろいろ話題がつきないロングセラーですが、『星の砦』も、あちこちの学校の演劇部での上演数回、試験問題にもなったし『サラシナ』などと並んでずっと続いてくれるものだ、と単純に信じていたわたしにとっては、寝耳に水。
★そこでひさしぶりに版元さんにしたところ、「倉庫見たけどありませんでした」わたし「ということは、『重版未定品切れ』?」「そういうことになりますかねえ」
があ〜〜〜ん。
★そうです。作家にとって何よりつらいことば。それが『重版未定品切れ』ということばなのでございます。品切れ、=売り切れでしょ。さっさと増刷してよ!というのは作家の言い分。「まあね〜いちおう在庫ないからね〜でもここまで売るのにずいぶんかかってるから、この本もういいでしょー」というのが版元さんの言い分。
★あるとき、何冊かの本が(もしかしたらダンボール箱いっぱい?)版元さんから送られてきます。これはこれで良心的なわけです。だって作家にも知らせず「裁断」しちゃうことだってあるわけですもんね。そして、その通告が。『重版未定品切れ』。
★出版社にとっては、出版契約はそのまま、でも増刷はしない、という状態になんの痛痒もないわけですが、作家にとっては、いとしい作品がこういう状態というのはなんともつらいところです。
★だから、わたしは作家としていいたい。重版しないのであれば、契約を打ち切ってください。その通告をしてください、と。そうすれば、別の出版社に持っていくこともできます。ソフトカバー、文庫など、いまはいろんな売り方が可能になってきています。もっともっと手にとりやすいかたちを追求できるのではないでしょうか。わたしのようなハードカバー作家は特にそう思う。
★というわけで、わたしはもうかつてのように心やさしい作家でも気の弱い作家でもなくなったので(笑)、こういう状態には耐えられませぬ。だからさっさと契約を、と思ったのですが、「しばらくお待ちを」ということで、在庫状況を調べるからという版元さんの決定(増刷するかしないか)を待っているところです。ÝÝ
2006年09月10日
★85歳のラーメン屋さん。

帰宅が深夜になったとき、駅前の屋台のラーメン「山ちゃんラーメン」を食べるのが楽しみだった。とにかくスープが絶品、近くの人や若い女性客も多く、テレビでも何度も取り上げられていた。
駅前の屋台が禁止されてから、山ちゃんラーメンも見かけなくなり、どうしたんだろうと思ったら、駅から相当離れた場所でほそぼそとつづいていた。娘が入学したときだったか、みんなで食べに行くと、おじいさんが得意の俳句を色紙にさっと書いてくれて、「お祝いだよ」といってもらったこともある。けれどそこも長くは続かず、おじいさんもいいお年だったから、もうやめてしまったのかもしれないと思っていたら、なんと屋台ではなく「山ちゃん亭」というラーメン屋さんができている、ということを、ラーメンのことなら何でも知ってる息子からきいた。
そこでおととい、行ってきました。前からおられた息子さん?がやってるんだと思ってたら、なんとおじいさんがいた! わたしたちを見つけて、なつかしそうに席までこられて、いろいろ話してくださった。「この店を出すのに48年かかりましたよ」……48年!「でもね、やっていけるかどうか、最初の1ヶ月は心配で眠れなかった」ファンも多かったから、宣伝すればいくらでもお客は来たと思うのだけど、あまり宣伝もしなかったらしい。けれど、「メレンゲ」というテレビ番組でとりあげられてから、にぎやかに繁盛している。おじいさん、すなわち「山ちゃん」は当年85歳。ほんとうにお元気で、富士山にも登っておられる。ぽんぽんとびだす江戸っ子弁も、きいていて心地いい。
85歳で夢をかなえるひともいる。「ひさしぶりにあんたに会えてうれしいから、一年ぶりにお酒飲んじゃうよ」おぼえていてくださってわたしも感激でしたが、お体だいじょうぶでしょうか。ラーメンはあいかわらずおいしかった。「お嬢さんを見ていてふと思いついた」即席の俳句の色紙もいただきました。
    玉川の小町と呼ばれ花水木 だれが小町じゃ〜〜〜。でも忘れられない夜になりました。色紙は娘が大事に持ち帰りました。

2006年10月07日
★『図書館のプロが教える<調べるコツ>』(浅野高史+かながわレファレンス探検隊・柏書房)

タイトルが長いのでぜんぶ入らないのだが、正確にいえばこう。

『図書館のプロが教える<調べるコツ>』
〜誰でも使えるレファレンス・サービス事例集〜
(浅野高史+かながわレファレンス探検隊・柏書房)

本を書くとき、どうやってその資料を手に入れるか、は、作家にとってかなり重要な問題である。わたしのような児童文学ファンタジー作家はあまり関係ないと……つまり「想像力だけだろう、問題は」と思われるかもしれないけれど、そうはいかない。原発の細管が超能力を持った少年によって破壊される危機を描いた『きみに会いたい』なんて、原子炉の構造を知るためにえらく苦労したし(編集者はわざわざ某原発に出向いて資料をさがしてきてくれた)、奈良時代にタイムスリップする『サラシナ』は当然ながら聖武天皇時代のさまざまなできごと、人物を総ざらえしなければならなかったし(このときも編集者をこきつかう)、もちろんのこと『進化論』では古今東西の進化に関する論文、はては旧約聖書まで、その単語がたとえ片言隻句の登場であろうと、読みこなし、把握しておかねばならないということでは、ひとつの作品を描くには膨大な「資料読み」が必要であることがおわかりであろう。これらは現代ファンタジー、というか、「こちらの世界」に足をかけている作品の場合なのだが、「あちらの世界」のみの場合だって、これはこれでリアリティーを保つためにはさまざまな資料の必要がある。まあひとつだけ例をいえば、『真実の種、うその種』の場合など、帆船で大洋を航海するわけだから、どの程度の苦労があったか、すこしは想像してみていただきたいものである。(←苦労したってことをいいたいわけね、要するに)
今はインターネットの活用によって、それまでの資料あさりは激減したが、でも、結局知りたいことに出会えなかった場合は多々ある。ネットの限界を知った上で、さらに何が必要で何をどう調べるか、というようなことがプロの視点、ということになる。
この本は、神奈川県の図書館司書さんたちがつくった本で、利用者からのさまざまな質問、疑問をどう解決したか、という実践記録が、読みやすくフィクション化されている。こどもたちが持った疑問に困った親からの質問、レポートを書くのに資料を探している学生からの質問、遠い記憶をまさぐる老人からの質問、さまざまな質問に対して、<レファレンス隊>を自認する司書さんが、神様のように天使のように、親切でていねいな対応をしてくれる。そして、読んでいると自然に「こんなふうに調べるのか!」と、わかってくるという、見事な本である。こんな質問を図書館の係りの方におたずねしたことはなかったが、やってみればよかったと思う話がずいぶんあった。「西暦を旧暦になおすには」とか、「漢字の人名が現地読みになったのはいつからか」とか、「わらじの作り方」とか、あげていけばきりがないが、どの疑問もトリビア級で、読み物としても楽しい。どの図書館でも、こういうふうに対応されたらどんなにいいだろう。あ〜この司書さんたちのひとりを秘書にしたい。……登場する「木崎ふゆみさん」は、わたしの読書ガイドのセンセイ。いろいろ教えていただいた方です。もの書き志望の方にかぎらず、ご一読を。