いま夕凪


 

右手には海 夕凪が波を止め
左手には 江ノ島電車
七里ケ浜の 駅のホームに
人を降ろす 乾いた夢と

海岸線に車走らせる 冬の或る晴れた日
沈む夕陽 ルームミラーに
まぶしくて助手席の君を見る
こんな光に包まれたら
全てが許されている気がしている

対向車線にすれ違う車の一日が
スライドのように照らされてゆく
こうして見ると人の顔は何て美しい

渋滞の列はさまっている テールランプにブレーキ

いま、夕凪 想いを止め 
心の柔らかなかたちを
君に告げる 吹き出しの文字
透明なまま海に浮かんだ

夢を射止める矢を
解き放てる瞬間
琥珀色に輝く
その瞳の海

沈む夕陽 ルームミラーに
まぶしくて助手席の君を見る
こんな光に包まれたら
全てが許されている気がして

僕はただ その柔らかな
君の心に触れているだけで
限りなく果てしなく
生きている そんな気がしていた

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